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〜Dream and hope〜

聖騎士団ブレイドバンカー




ラグナロク世紀100年。
ラグナロクの世紀は、今で言う1年とは、
この世紀が十を経過すると成立するようになっている。
だから、世紀100年に生まれた赤子は、
世紀110年で、生後1年、という事になっている。


そして此処はラグナロクの世界の中心都市とも言える首都プロンテラ。
土日だけではなく、平日も祝日には負けない位人で賑わっている。
街のあらゆるところから覗き込んでみても、
其処には人という人が自分の眼へと映し出されてしまう。
人々がこうして賑わいを見せるのも、あるひとつの施設によるもの。
其れがプロンテラの北西に位置する施設、騎士団があるからだ。
騎士団の人々はプロンテラを中心に毎日警護している。
こうすることで人々はより安全に、街の中を探索出来るというわけだ。
盗賊が襲ってきても、野生の動物が反乱を起こしても、
ひとたび騒動が起これば騎士団は誰よりも早く其れを察知し、
迅速に行動を起こすのだ。
そんな騎士団を誰もが敬い、誰もが感謝していた。
其の騎士団を治めていたのが騎士団長の「ルイス」という男。
何の曇りもない青い空のような髪を持ち、
風の流れを無視するかのように備えられた鋭い髪形をしている。
きりっとした眉にずっしりと構える其の体には、
見た者を圧倒するほどにまでの貫禄を備えていた。
其れゆえに騎士団長としての風格を見かけだけで表せていたし、
騎士団ではない人間ですら、騎士団長だとひとめで解ってしまう。

彼の名はルイス=エレクティアという名前。
ルイスは騎士団長であり、このプロンテラの騎士団が出来た時から、
騎士団に勤めていた。現在の団長は此れで三代目になるのだとか。
ブレイドバンカーが設立されて以来、空っぽになってしまう
プロンテラの騎士団の団長をしている。其れを任命するのは、
後に出てくるレグリティア=ジルハード、という人物。

一代目はエレクティア家の、ルイスの父上に当たる方で、
名をヴィルネッタ=エレクティアといった。
彼、ヴィルネッタはプロンテラの人の多さに収集がつかず、
人が多いところには其れだけに問題が多くなってくることを
きちんと理解していた。其れ故に、犯罪が起きたとしても、
其れを裁く権利を持った人間はおらず、此処には無法にも、
法律、といった概念が存在しなかった。
其れゆえに、今こそ保っているものの、当時、騎士団が出来る前は、
誰もかれもが自分のやりたい放題で悲惨だったという。

其れを見かねたヴィルネッタは自らが騎士団を設立し、
新たに法律というものを定め、世の中を安定させていったという。
だが、ヴィルネッタは其の時、46歳。騎士団として、
長く勤める事はなかなか出来ず、4年後には次期団長を選び、
其の後を継がせようと考えていた。
ヴィルネッタは騎士団の人員を沢山従えていた。
後にも先にもこのヴィルネッタという男が存在していなければ、
今の騎士団は成り立っていなかったといっても過言ではないのだろう。


そして騎士団の団長が、団長を降りる時、次期団長を決める選挙があった。
そこで選ばれたのがヴィルネッタの側近であった、レグレッタであった。
レグレッタは騎士団の間での呼び名であり、
名前はレグリティア=ジルハード。騎士団の中でも珍しい女性の方で、
騎士団の中でも剣術は一流であり、其れは、
一代目団長のヴィルネッタにすらひけをとらなかったという。
度々訓練の時、ヴィルネッタとレグレッタが手あわせをしたとき、
騎士団員の皆は、瞬きをするのがもったいないとまで豪語し、
其の試合を見ていたのだという。勿論彼女も騎士団の中では、
数少ない女性という事もあり、ヴィルネッタが団長を辞める寸前まで、
彼女は団長という立場を拒絶し続けていた。
男性というものは、何時の時代でも、女性の下では働けないといった、
無駄なプライドが存在するものであった。勿論この騎士団も例外ではない。
年も若く、まだ24歳という年で騎士団長に任命されていたのだから、
男たちは黙ってはいない、、が、其れは極僅かの人間だった。
騎士団に勤めている人間の殆どは、誰が上にたとうとも、
自分自身の役目を担うことに誇りを持ち続けていた、
其れと同時に団長にはとても忠実だったのだ。
レグレッタも例外ではない。彼女もまた、団長には忠実でいて、
尚且つ、機転の利く人材であったために、ヴィルネッタの側近という役割を、
任せられていたのだ。団長であるヴィルネッタがやめた時、
彼女は決意し、自らが次期団長としての名乗りを上げていた。
騎士団の中でも引き継がれている彼女の名言までもがこの騎士団には、
存在している。其れは彼女が正式な団長となったときに放った言葉だ。


「ヴィルネッタ様の後を継ぐレグリティア=ジルハードだ。
見ての通り私は女性であるが、私についていけない、
私に反論があるという者は、今すぐに私の目の前までこられたし。
私が貴殿の相手をし、今ここで亡き者としてやろう!」


彼女は古びた大きな台の上で言い放った。
其れは冗談ではなく、彼女の本音である。
自分についてくるものだけでよい。自分に不満があるのならば、
今すぐ自らが手を下そうというものだった。
特別に人を殺める手段をとったわけでもない。
彼女は言うよりも、力で示した方が解りやすいと会見したのだ。
其れゆえの言葉であり、彼女は自分の腕に其れだけの自信を持っている。
このとき、騎士団を辞めていく人間は居たのだが、
彼女に対し、挑もうとして斬りかかった騎士団員は全くいなかったという。




騎士団の初代団長である、ヴィルネッタと、
其の母であるルークルティアの間に生まれたのが、
この物語の主人公であるカイ=エレクティアである。
カイは、プロンテラで生まれ、父の仕事に尊敬していた。
物心ついたときから彼は父から剣術の稽古を受けていた。
だが、彼には騎士団で勤めるという仕事には関心がなかった。
勿論、父は尊敬していた、だが其れは尊敬していただけであり、
自分も何時かは騎士団で働きたいという根本的な理由にとは、
つながらなかったのである。



ラグナロク世紀170年。


カイ、7歳。
7歳といえば、両親の元で穏やかな時間をすごしている年代である。
だが、カイは騎士団長の家計という事もあり、
家では毎日剣術の稽古をさせられていた。
それに何の苦痛もなかったし、カイ自身が其れを好んで受けていた。
其れが功を制したのだろう。カイは見る見るうちに剣術を上達させていく。

カイが10歳になったとき、父、ヴィルネッタは、
カイに騎士団の中を案内させていた。
父はカイに何時か騎士団をついでもらおうと考えていたからだ。
だが、其れは余りにも早すぎた展開ではなかっただろうか。
まだ10歳という幼いカイに、騎士団を見せたところで、
何の影響もなかったと言えるのではないだろうか。
其れは父であるヴィルネッタが一番良く知っていたと思う。
其れでも父、ヴィルネッタはカイに騎士団内部を案内させた。
このことがきっかけで騎士団に対して何かを掴んでくれれば、
父はそのことだけを考えていたのだと母は話していた。
この時、騎士団を担っていたのは、レグレッタである。






「騎士団の中って物凄く立派なんだなぁ。
お父さんは何時も此処で仕事をしてたんだね。」


カイは騎士団の中で父、ヴィルネッタにそう言った。
少し関心を持ってくれたのだと思い、父は嬉しそうに、


「そうだぞ、カイ。
おまえも何れは此処で、騎士団長として働くんだぞ。
お父さんは其れが楽しみで楽しみでたまらないんだ。
だからカイ。私の後を立派に継いでくれよ。」


昔でこそ団長であった彼も、今は家庭を持ったお父さん。
年のせいで騎士団をやめ、今では家庭を養う為に、
現場で働いているというのだが、
其れでも元団長だったこともあるのか、レグレッタにコンタクトをとり、
騎士団内部を案内させることを承諾してもらっていた。


団長室に差し掛かり、其処を通り過ぎようとしたとき、
団長室の扉がギィ、と音を立てて開いた。
其処にたっていたのは、鮮明な赤をした髪を持ち、
其れを自らの持ち物として扱うかのように仕上げられている。
綺麗に整えられた其の顔には化粧など必要ではなかった。
本当に、一瞬其の姿を見たものは、とりこにされてしまい、
誰しもが恋に落ちてしまう程の美形である。
其の美形とは正反対な性格を持つ彼女は、
そんな自分に何不自由なく、24歳という若さで団長を務めている。
彼女はヴィルネッタとカイに気づくと、一礼をし、話かけてくる。


「此れはヴィルネッタ様、御無沙汰しております。
団長の後を継いで、はや5年になりますか。
おや、そちらはヴィルネッタ様の息子さんでおられますか。
ヴィルネッタ様に似て、お若いのに其の風格を持っていらっしゃられる。」


堅苦しい言葉を平気な顔をしてつらつらと並べていくレグレッタ。
今は団長という立場でもなく、騎士団に勤めている立場でもない
ヴィルネッタは、


「レグレッタよ、私はもう団長でもなければ、騎士団に勤めているわけでもない。
そのような堅苦しい呼び名はよしてくれないか。」


父はカイの頭をなでながらレグレッタにそう伝える。
少しうろたえた様子を見せたレグレッタは困り果てている。
今はそうでないにしろ、元々は自分の上へたっていたもの。
其れを騎士団にはいないからといって、
そう簡単に言葉を変えられるものではないからだ。
だが其れはレグレッタも思っていれば、
父、ヴィルネッタも同じことを思っていた。


「はっは、まぁいいだろう。
そういって簡単に変えられるものでもなければ、
おまえもはいそうですといって変わる人間ではないのは、
私が一番良く知っている、からかってみただけだ、許せ、レグレッタ。」


そういうと安心したのか、レグレッタは先ほどのように、
何時もの風格を取り戻す。






騎士団の内部を案内してもらってから数時間がたっただろう。
俺は父に少し内部を見学したいといって一人で見学することにした。
目的は、先ほどの団長室の中にいた、レグレッタという女。
別段惚れたわけでもない。ただ、騎士団で働いていた、
父のことを聞きたかったのだ。だがそれには、
父が同行していたのでは、レグレッタも困ってしまうと思ったからこそのことだ。
俺はうろ覚えな道をたどり、団長室へと足を運んだ。


団長室。


コンコン、とドアをノックする。
女性の声と共に、先ほどと同じようにして、ギィと音を立てて扉が開いた。


「おや、此れは此れは。
ヴィルネッタ様の・・・。どういった御用件で。」


そういうとレグレッタは、部屋へと案内してくれた。
部屋の中は何とも素っ気ないイメージを持たせてくれる。
家具という家具はなく、それでいて本来の部屋の2倍くらいは、
あろうと思える室内。室内は全てタイル張りで施されており、
壁にはいくつもの「武器」と称される類が並べられてある。
一人では扱いきれない程の数が其処にはおいてある。
木の弓を改造し、ボタンひとつで自動的に、
誰でも同じ速度で飛ばせられるように改良された通称ボウガン
と呼ばれるものが立てかけられてあったり、
いびつな形、其れでいてしっかりと固定されたつばのついた長剣が数本、
レグレッタの何倍かもありそうに見える長い鉄製の槍。
これらの武器が其の部屋には並べられてある。

ひときわ目立ったのが、其の武器が格納されてあった棚の上に飾られた
一枚の油絵。油絵にはローマの文字で描かれた名前が書いてあった。
其の名前を読んでみると、其処には父であるヴィルネッタの名前が刻まれていた。


「此れ、お父さんの絵ですね。」


そういうと俺は自然と其の絵を眺めていたらしい。
レグレッタはくすりと笑みを浮かべると、


「そうだ。其れは私の前に団長を務めていたヴィルネッタ様の絵。
ヴィルネッタ様は本当に良い方であった。
其れでいて剣術も超一流。世界中何処を探しても、
ヴィルネッタ様を超える剣豪は居ないのであろう。
戦闘を行なう其の構えにですら、隙が全くなく、
其れに見合った剣術を会得されていた。

ああ、すまない、こんな話をしてもわからないだろうか・・・。」


彼女は最後にそんなことを付け足して申し訳なさそうにした。
が、俺はそんな事はどうでも良かった。
父の事、騎士団をまとめていた父の事をとにかく、
何でも良かったから聞きたかった。其れが例えどのようなことで、
俺が理解出来ない事だとしても其処には何の苦痛もない。


「いえ、良いんです。
此処にきたのは、家庭を担う父としてではなく、
騎士団の団長として勤めてきた父のことを聞きたかったのですから。」



そういうと安心したのか、レグレッタは室内唯一の椅子へと腰をかけ、
父の話を沢山してくれた。
其の話を聞いていた俺は目を輝かせていたと思う。
話してくれることのひとつひとつが俺にとっては知らない事ばかりで、
とても面白かったのだから。
其れを話すレグレッタの目もまた、俺と同じようにして、
目を輝かせて次々と話をしてくれた。
そして最後にこう言った。


「おぬしもどうだ?この騎士団に入ってみないか。
ヴィルネッタ様の御子孫であるのならば、
私は何時でもおぬしを歓迎しようぞ、ははは。」


そういってレグレッタは満足そうに笑みを浮かべ、
俺は考えておきます、と一言だけいって部屋を後にした。
正直この時、俺は騎士団に入る事を決意していた。
父だけではなく、騎士団で働いている人が、
とてもいきいきしていたからだ。
きっと俺がやりたい事は騎士団に勤め、
父の後を継ぐことなんだろう、とそう思ったからだ。



翌日。


両親に少し出かけるといって俺はまたあの騎士団へと足を運んだ。
此処の騎士団はとても社交的である。
門番と思われる、重そうな黒い鎧を全身に身にまとった兵士が、
二人、剣を構えてたっていたのだが、
そこで俺は少し見学がしたいので入れてくれというと、
すんなりと兵士は通してくれたのだ。
後日談だが、この時兵士の二人は、ヴィルレッタの子孫だと
いう事を解っていたから通したということらしい。
其れでなければ誰かれ民間人を通していたのでは、
騎士団内部で何時騒動がおきるかわからないのだから。


俺はまた団長室の前へと着ていた。
コンコン、とノックすると彼女は現れた。


「おや、昨日の。
また話を聞きに来たのか?」


そういうとレグレッタは中へ入れとまた誘ってくる。
俺はそれを断らずに中へと入る事にする。
そして、背中を向けたレグレッタへと単刀直入に、


「俺を騎士団に入れてくれませんか。
昨日の話を聞いて、俺は決心しました。
きっと俺のやりたい事は、此処で、
父の後を継ぐ事だと思ったのです。」


レグレッタは其の話を聞いて、嬉しそうに微笑むと、
俺の目の前にきて、手を差し出した。


「私の名はレグリティア=ジルハード。
貴殿を騎士団員として心から迎えようぞ。」


そういって、俺は差し出されたレグレッタの手をとり、
互いに握手を交わした。


カイ10歳、其の若さで自ら騎士団員へと名乗り出た時の事だ。







騎士団員になったというのを両親に伝えると、
一番嬉しそうにしていたのが父のヴィルネッタである。
おまえは将来騎士団の団長として勤める男だとか何とか、
奇声を発しながらも喜んでいたのは記憶に新しい。
其れからというもの、騎士団へ赴いては剣術の稽古。
家に帰ってからは父から剣術の稽古を・・・。
と、1日中剣術の稽古を行なっていた。
其のかいもあってか、10歳という若さで、
騎士団の中ではトップに近い剣術を見につけていた。


「此れより、模擬戦闘試験を行なう。
間違っても相手を殺す真似はするなよ。
どちらかが動けなくなるか、降伏宣言をした時点で、
其の試合は終わる、良いな!」


レグレッタの掛け声と共に、
毎年の騎士団の行事となった模擬戦闘試験が行なわれる。
此れによって成績を収めたものには、
団長自らが階級を進呈してくれる仕組みになっている。
この時、レグレッタは正直階級はどうでもよく、
稽古を受け続けてきたカイの成長を楽しみにしていた。


試合は全部で4時間にわたって行なわれた。
俺は殆ど戦わずして勝ち上がっていた。
その理由は、日ごろ、レグレッタと手合わせをしていたのを、
団員は皆知っていて、其の実力を解っていたからだ。
だから俺と当たる人間は皆、戦わずして、
降伏宣言をしていた。



優勝決戦の時にですら、相手は棄権しようとした。
が、其れを見かねたのか、レグレッタは立ちあがり、


「此れでは試合にならない。
良かろう、カイの相手はコイツにやらせてみよう。」


そういって闘技場に姿をあらわしたのはカイ。
いや、正確に言うならば完全にプログラムされたカイの人造人間、
といったところだろうか。レグレッタは続けて、


「この試作型001はカイの戦闘データが完璧に、
プログラムされたただの機械だ。
だが、機械といえど、其の実力はカイと同等のものだ。
相手は機械、殺す気でかかってよいぞ、カイ。」


其の言葉と同時にカイである試作機は襲い掛かってくる。
構えも、カタチも、攻撃パターンも全てカイと瓜二つ。


「俺に剣を抜かせた事・・・後悔させてやろう。」


カイは機械相手にそう言い放ち、試作機と同等の攻撃を繰り出した。



ガキィィイン!


金属と金属がぶつかる音がこだまする。
闘技場内は歓声を上げている。
それには目もくれず、カイは試作機カイと距離をとると、
其のまま足をばねにし、体を特攻させる。


「食らえ!バッシュ!」


そういうとカイの剣は光に包まれ、刹那。
いくつもの閃光が走り、試作機の腹部に直撃した。



「くっ!」


言語機能を備えた試作機は其のまま剣を杖にし、
カイと距離が離れる。
生身の人間では恐らく其の時点で動けなくなっていただろう。
だが、カイは機械をあいてにしている。
普通の攻撃では恐らく倒せない。
レグレッタは不適な笑みを浮かべ、其の様子を伺っていた。



カイは激闘を繰り広げていた。
とはいえ其の時間は実に10分程度の短いもの。
其の間に繰り出された攻撃はもはや、
肉眼では数え切れないくらいのものとなっている。
闘技場内は静まりかえり、レグレッタですら、
余裕の表情をなくしてしまっている。



「仕方ない、そろそろあれを試してみるか。」



そういうとカイは剣を垂直にすると、
剣先に自分の手のひらをあて、
カイの試作機にはないデータを抽出する。



「な・・・・?
ま、まさか!」



レグレッタは思わず立ち上がり、汗で額が滲んでいるのを感じる。
其の構えをレグレッタはしっている。
当時、ヴィルネッタが団長であったとき、
模擬戦闘のさい、ヴィルネッタとレグレッタが手合わせをしたとき、
お互い一歩も引かないところでヴィルネッタがうってきた
奥義の構えと同一だったからだ。


「食らえ・・・!」


カイは其の掛け声と共に剣を90度曲げ、
剣先で見事な十字架を描いた。
其の十字架はやがて、光を放ちだし、
カイの剣へと吸収されていく。
すると、剣先は夥しいまでの光を放ち、
カイは其のまま機械の懐へと一瞬にして飛び込んだ。


懐に飛び込まれ、反応が出来ない試作機を見やり、


「ふっ、此れで終わりだな。」


カイは其の一言と共に、奥義を放つ。


「グランドクロス!」


カイの周りに一筋の円形を描いた閃光が走る。
途端試作機は粉々に吹き飛んでしまう。
あたりはとても静まり返り、しん、としてしまう。
レグレッタも流石の事で反応が出来ず固まってしまっている。
暫くするとレグレッタは我に返り、


「は、ははは、はははははは!
流石はヴィルネッタ様の子孫だ。
こいつは面白い!まさか私ですら会得出来ない、
未知なる職業とされるパラディンの奥義を
この若さで簡単に会得してしまっていたとは!」


レグレッタは声を高らかにしてその場に立ち尽くす。








そんな模擬戦闘から数年後。
レグレッタがヴィルネッタ団長の話をカイに持ちかけた。
ヴィルネッタ団長が生きていれば、
自分の子孫を使って、世界最強の騎士団を設立しようと
考えていたらしいのだ。
其の名も「ブレイドバンカー」
騎士を担う立場でありながらも、最強の意味合いを持った名前。
其れは世界最強の騎士の名には恥じない名前である。
カイは其の考えにあっさりと納得した。
最強であれば、きっとこの街も、
もっともっと住みやすくなると考えたからである。
そこでレグレッタが考えていたのは、
レグレッタと筆頭にし、カイを側近へと招き、
更にプロンテラ中央でブレイドバンカーの素質あるものを、
募集するという事であり、其の募集とは、
世界各国で行なうというとても大規模な提案であった。
カイはそれに納得する。するとすぐにレグレッタは、
騎士団員に内容を話し、告知を出すことにした。




1ヵ月後。



騎士団内部は見たこともない人間で埋もれていた。
此れ等の人は全てブレイドバンカーへの志願者である。
審査はいたって簡単で、レグレッタとカイがペアを組み、
それに向かってくるブレイドバンカー志願者と戦うという事。
勿論この二人を納得させなければ、其の時点で失格。
そして、この告知には更なるルールがあった。
戦う者は相手を殺す気でかかれ、と記されている。
此れは、例えブレイドバンカー志願者であろうと、
命を惜しまず戦う事を誓うための告知である。
簡単に言えば、レグレッタとカイに殺されてしまっても、
失格として認められるという事なのである。
末恐ろしい企画でもあり、本当にそこまでして、
戦う意味があるのかどうかは解らない。
だが、行なってしまったものはもう後戻りは出来ない。
カイとレグレッタはすぐに戦闘服へと着替え、
闘技場へと姿を現した。



闘技場に集まった有数の騎士達は実に様々の格好をしていた。
其れは其の地方の教訓であったり、規制であったり様々。
白い馬にのっていかにも騎士という風格を表したものもいれば、
騎士という職業に就きながらも二刀流を好んでいるものもいる、
が、其の大半はレグレッタとカイの目の前では赤子同然だった。
闘技場内はまたもや静まり返る。当然といえば当然。
世界で恐らくトップかもしれないと謳われているこの二人が、
ペアを組んでいるのだから、早々では太刀打ち出来ない。
殺生こそしなかったものの、大半は、
一撃を受け止めてから降伏宣言を行なっていた。
呆れていたのはレグレッタのほうだろう。
今の世の中の騎士は情けない、とため息までしている。

だが、そこに現れた一人の騎士が言う。


「私はサラ。サラ=ウィーディアス!
ブレイドバンカーに入隊したく志願した者だ!」


威勢良く放たれた言葉を耳にしたレグレッタは笑みを浮かべた。


「ほう、此れだけの戦闘を見てまだ意欲を失っていないものがいたとは。」


そういってレグレッタは剣を構えた。
同時にカイもそれにあわせて剣を構える。
刹那。サラはカイの懐へと飛び込んでいた。



「遅い!バッシュ!」


言葉と同時にカイの体は宙に浮いていた。
不意打ち、でなくとも恐らくサラの攻撃を受けるには、
それ相応の動体視力が必要になっていただろう。
其れを見たレグレッタは今だとばかりにサラの懐へと飛び込み、



「ほう、此れはなかなか面白いではないか。
楽しませてくれようぞ!」


掛け声と共にレグレッタは細身の剣、レイピアを器用に回し、
サラの腹部を綺麗に切り裂いた。
勿論サラとてカイを吹き飛ばした後、即座にレグレッタの方へと、
視線を追いやったのだが、ソレよりも早く、
レグレッタはサラの懐へと飛び込んでいたのだ。


腹部に傷を負ったサラは其のまま後退していく。
カイはカイでこの時、綺麗に受身をとっており、
外部による負傷は殆ど見られない。



「やってくれたな、其処の女騎士。
少し甘く見ていたようだ、次は本気で殺らせてもらう。」


カイはそう言い放ち、剣を構えてグランドクロスを放つ準備をする。
其れを見ていたサラは咄嗟に攻撃に備えて構えを変える。



刹那。



カイはサラの懐に飛び込み、にやりと笑うと、


「おまえはこの技を知っている。
そんなヤツにわざわざ俺の奥義を放ってやる程のお人よしではない。
悪いが、おまえも俺にしたことだ、そう思ってあきらめるがいい。」



カイはそれだけの言葉を放ち、剣を其のままサラの腹部へと突き刺そうとした。
其れは寸止めで終わった。



「な・・・に・・・!」



カイは額に汗をかく。
サラはにやりと笑う。


「おあいにくさま。
おまえがそうしてくることくらい、私は知っていた。
私が其れをわからずに防御に徹していたと思っていたのか。」


サラの長剣は見事にカイの腹部で寸止めされていた。
刹那。カイは寸止めしていた剣を器用に直角におろすと、
サラの剣を弾いた。


「な!この体勢から・・・!しまった!」


サラは剣を弾かれて体勢を整えるのに時間をとられてしまった。
カイは其の隙に足をばねにし、より一層、加速をつけて飛び込む。
其の速さはチーターの如く、空気の抵抗をものともしない速さ。
カイは咄嗟に剣を投げ捨て、サラの腹部に強烈なひじうちを入れた。



「ぐぁ・・・!」



サラは其れだけを放ち、その場に倒れこんでしまう。
闘技場内は唖然とし、誰一人の声すら聞こえていない。
カイは剣を直しこむと、


「おまえの負けだ、サラ。
此れは生死をかけた戦いだ。隙を見せたおまえは、
本当ならば殺されている。」


そういい捨ててカイはレグレッタの元へと行く。



「待て!ならば殺せばよいだろう!
私にはブレイドバンカーに入隊する資格がないことは、
十分に解った。だが、此処で生き恥をさらすのも、
騎士としては惨めなのだ!
おまえも騎士ならば私の気持ちが理解できよう!」


腹部を押さえながら、彼女は叫んだ。
目には無数の涙を浮かべていた。
其れに気づき、レグレッタはサラの前へと歩んでいく。


チャキ。


レイピアが音を立てて垂直に掲げられる。
レグレッタは何も言わず其れを彼女の頭上へと回す。



「・・・良かろう、そなたをブレイドバンカーへと迎えいれようぞ。」



其の瞬間、闘技場内は歓喜の声を上げてうなりだす。
場内はゆれ動いている。何千、何万と居るこの闘技場。
サラは立ち上がり、レグレッタとカイと握手を交わしていた。














ラグナロク世紀200年。



たった三人という少数で成り立ってしまった騎士団。
レグレッタという団長が存在し、
其の側近にカイとサラが存在している。


其れは直ぐに「ブレイドバンカー」という名前で、
ラグナロクの世界へと広まっていった。





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