「言えなかった言葉」


「好きだよ」って言えなかった
今なら何でも言える気がして
君を探してみるけど もう見つからない
あの時 あの場所 あの時間に
君に伝えていたのなら…?

暗く湿った街路樹に
涙で頬をぬらす君を見た
声をかけた僕 振り向いた君
「どうしたの?」なんて言葉出るクセに
本当に伝えたかったあの一言が
何時までも 君には言えないままで

「好きだよ」って言えなかった
今なら何でも言える気がして
君を探してみるけど もう見つからない
あの時 あの場所 あの時間に
君はどうして泣いていたの…?

受話器から聞こえる君の声
其れだけで満たされる僕の心
声を送る僕 答えてくれる君
「明日会おう」なんて言葉紡いで
本当に伝えたかったあの一言を
明日こそは 君に言ってみせると

「好きだよ」って言えなかった
今でも一人呟いている
君の後姿が遠く 消えてしまう
あの時 あの場所 あの時間に
一番伝えたかった 僕の言葉 言えなかった言葉

目を閉じて 安らかに眠る君
綺麗な顔して 微笑んでいるよう
君の左手握り締めて 叫びたい
あの時 あの場所 あの時間に
言えなかった たった一言を

「好きだよ」って言えなかった
君が永遠の眠りについた
二度と会えなくなる 其の瞬間も
あの時 あの場所 あの時間に
言いたかった一言も 涙が邪魔をして

もしもあの時 伝えられたなら
君はどう答えてくれたかな?
今ではもう 其れさえも分からなくて
君が居ない今も 分からなくて
空を見上げて 聞いてみる
「君は今 何をしているの?」

あの時 あの場所 あの時間に
言いたかった一言を 今此処で
空になった君へ 最後の言葉を紡ぐ

「好きだよ」って一度だけ
今は空になった君へ 一度だけ
此れでサヨナラ 愛しい君
あの時 あの場所 あの時間に
言えなかった言葉 そっと呟いた

とどまることを知らない涙
手に小さな温もり感じ
振り向けば其処に

君が笑ってくれた気がした



poem by 神無月ヒカル
1:46 2008/06/09