RagnarokOnline
〜Dream and hope〜
3/聖騎士カイ
エルクと行動を共にし、巡礼を終え、
無事アコライトに転職出来た私たちは予約しておいた宿へと足を運ぶ。
宿につき、部屋に入ったとき、気づいてしまう。
考えて見ればベッドは一つしかなく、
此処で寝るには二人でベッドに一緒に、ということになる。
流石に私も其れは恥ずかしいのだが、
でもベッドは1個しかないし、エルクを床で寝させるわけにもいかない。
どうしたものかと考えていたらエルクが口を開く。
「いいよ、俺床で寝るから。
元々盗賊は宿なしで何時も野宿だったし、
部屋があるだけでも有難いと思ってるくらいだ。
ヒカルは風邪引かないようにベッドでちゃんと
暖かくして寝るんだぞ。」
そういうとエルクはとっとと床に横になり寝てしまった。
見透かされていたのだろうか。
もしくはエルクも同じ事を考えていたのだろうか。
疲れていたのか、すやすやと横になって眠るエルクの姿がある。
其の姿は最初に倒れていたころの姿と似ていた。
でもこのままベッドで一人眠るわけにはいかないので、
私は部屋を出てカウンターで布団をもう一枚ほしいとお願いした。
店員は快く承諾してくれて、布団を1枚部屋まで運んでくれた
私は其れをエルクに起こさないようにと布団をかけ、
ベッドで眠ることにした。
気がつくと空は晴れ上がり、
何事もなかったかのような表情をしていた。
エルクは、というとまだすやすやと眠っている。
そんな小さなエルクの背中は、どうしてか、
何時か見たお父さんの背中のように、
とてもとても大きく見えた気がした。
私は知らずの間に其の背中を見て微笑んでしまっていた。
ごそごそとエルクが動き出し、
うーん、と声をかすらせて起き上がり、私を見て挨拶をする。
「おはようヒカル。なんだ、朝からにやにやして。
気持ち悪いな。」
エルクはまだぼやけている頭をくらくらさせながら、
朝一番からそんな事を言ってのける。
少しカチンときたのだが、其れよりも先に、
背中を見て微笑んでたことが簡単にエルクにバレたという事だ。
知らず私の顔は赤くなって照れてしまっていた。
「えへへ。ちょっといい事がありました。」
そういって右手を頭にぽんっと乗せながらそういった。
エルクはそんな私を見て暫くぼーっとしてしていた。
だから私は言い返してやった。
「あら、エルクさんこそ、私のことぼう、とみて、
何か顔についています?ふふ。」
さあどうだ。反論出来ないだろう。
そう思った矢先、エルクは其のまま後ろに倒れて寝てしまった。
呆れた。ただ眠かっただけだったなんて。
「もう、知らないです!」
そういってエルクの布団を思いっきりはいでみたりした。
エルクはいきなりのことにびっくりして途端目を覚ます。
突然の事だったからか、先ほどとは違い、目はぱっちりとあいているようだ。
何があったのか、どうして私がこんな態度に出ているのかも
知る良しもない。当然と言えば当然だろうけど。
そんな事をしながらちょっと遅めの朝ごはんを二人で食べる事にする。
宿で出されたパンとミルクは、久々に食べた気がしてとても美味しかった。
エルクは隣で此れじゃ足りないとダダをこねていたのだけど、
そんな事は気にせず自分の分を食べてしまう事にした。
修行のために私たちはプロンテラ南を出て少し離れた草むらで、
術の練習をする事にした。
彼は彼で剣術の練習として、聳え立つ木に向かって自らの短剣で斬るというもの。
たんに斬るだけではなく、腰から短剣を出す角度や、出した時の一手をも
研究している様子。剣を抜いて木を斬っては自分の剣を眺めてブツブツと独り言を発し、
其のまま器用にクルクル、っと剣を回しながら腰に剣を戻していく。
私は私でヒールをもっと正確に使えるように、ということで、
エルクが斬った痕にヒールをかけて、人間ではなく、木そのものを治癒していく。
人間ではないにしろ、其処には確かに生命が宿っている。
ならば其れも治癒が可能だと考えたからだ。
そうして修行をしていると、よろよろと私たちのところへ近づいてくる気配を感じた。
其の気配の主は私の後ろに止まり、刹那、エルクは颯爽と其の気配、
ようは私の背後に回りこみ、短剣を抜いて突き出した。
ひえええ!と声が聞こえる、私はとっさに振り向き気配の主を直視する。
気配の主は無様にもしりもちをついて右手をエルクに向けて、
殺さないでくれとだけ発していた。
あきれ返ってしまったエルクは剣をしまい、其の男に手を差し伸べる。
男は其の手をとり、立ち上がり、ごめんと一言謝ってきた。
刹那、お願いがあると私たちに申し出てきた。
「君たち見た所腕のたつ聖職者と剣士のようだが、
どうだろう・・・私の話を聞いてはくれないだろうか。」
取り敢えず話しだけでも聞いてみようと私は話を聞くことにする。
が、其のときエルクは其れを拒否する。
「おいおいおっさん、いきなり着て名前も名乗らずに人にものを頼むなんて、
失礼にも程があるんじゃないか?そんな奴の話なんて聞きたくもないし、
どうせロクな事でもないんだろう?」
そういうと男は慌てて自分の名前を言おうとする。
しかし其れよりも早く私はエルクに話しかけていた。
「エルクさん。良いではないですか。話を聞くだけであって、
何も協力するとは言ってないですし。
困ってる人を助けてあげるのも、私たちの役目ではないですか?」
そういうとエルクは反論出来ないのか、
「まあどうでもいい。」
そう一言だけいっておとなしくなった。
話を戻そうと私は男の人に話しを続けるように頼んだ。
内容はこうだ。
此処から南東へいった先にモロクという街があり、
其のモロク中央から少し北へ進んだ所に新しい館があるそうだ。
其の新しく綺麗な館が最近になって突然不気味になったという。
中には館の中でモンスターを見たと喚くものもいれば。
神話に出てくる吸血鬼、いわばドラキュラを見たという人まで居る始末。
おかげで其れまで賑やかだったモロクの街も、
今じゃ昼も夜も静まり返ってしまっているという。
そして私たちに其の原因を調べてほしいというのだ。
「何だか楽しそうじゃん?下手なお化け屋敷よりずっと怖そうだ。」
そういってエルクは簡単に其の内容を引き受けてしまった。
まぁ、私ももとより断るつもりはなかったので其れで良いと思うけれど。
街がそんな状態だというのにお化け屋敷扱いは少し不謹慎だと思った。
思ったけれどエルクはもとよりこんな性格だし、
男の人も引き受けてくれるのを喜んでいるので言わなくても良いかな、
と思って何も言わずに引き受けることにした。
男は私たちにモロクまでの地図と、モロク内部の地図の2枚をくれた。
原因が解明するまで其の男はプロの宿に泊まるとだけいって、
その場を去っていった。
「さーて、じゃあモロクに行くとしますか。
実際モロクって俺の地元だから地図って別に要らないんだけどな。
まぁあるに越したことはねえし、丁度良いってもんかな。」
何とも調子の良い発言をするエルク。
でも言われてみればエルクの出身地は砂漠の街モロク。
此処は盗賊で栄えていて、盗賊専門のギルドが、
このモロクの街の何処かに存在するらしい。
もちろん盗賊とは世間一般では犯罪者として扱われるので、
ギルドもほんの数名しか其の存在を知らない。
勿論、エルクは其のギルドがある数少ない人間の一人、という事になる。
話し込んでいても仕方ないので私たちは早速モロクへ向けて移動することにした。
大きな大きな草むらを抜けた先は一瞬にして砂漠地帯。
幸い砂嵐はなく、空は良好だ。
こんな砂漠地帯で地図なんて本当に役立つのだろうか。
と少し疑問に思ってしまうくらいに、辺りはただの砂の山。
「ヒカル、こっちだ。」
そういってエルクは自慢の短剣をくるくる回しながら私にそういった。
私はただエルクの後ろをついていくだけのお荷物要員となってしまった。
話を聞いてあーだこーだ言った割りには、エルクが居ないと、
街のひとつにも辿り着けないと知って少し自己険悪に陥りそうだった。
大きなため息をついてエルクについていこうと顔を上げた、が
其処にはエルクの姿はなかった。
「あれ・・・?エルクさん?エルクさん!何処にいるの?」
出せる限りの声を出してエルクの名前を呼び続けるが、
エルクからの返事はなかった。
「ヒカル!」
小さな声が聞こえてくる。間違いなく此れはエルクのものだ。
こんな砂漠地帯で何処にいるかも解らない人間の声を聞き取る。
其れはうるさい人ごみに紛れ込んだ一人の人間の声を聞き取る其れに似ている。
そんな声が私の耳はしっかりとキャッチしていた。
私は声のする方へと足を運ぶと、
其処には今までに見たことのない大きなクレーターのような穴が開いている。
微かに見える其処にはエルクの右腕だけが存在している。
見れば見る程に其の右腕はドンドン其の穴へと吸い込まれていく。
私にはどうする事も出来ないが、エルクをほうっておくわけにもいかず、
意を決して私は其のクレーターへと自ら入り込んだ。
すとん、と落とされた其処は大きな洞窟のようになっている。
不思議と此処にはあの大量に敷き詰められた砂も一切ない。
あんな大きな穴が開いているにも関わらず、どうして砂が
一粒も存在していないのかは不思議に思うところなのだが、
其れよりも先にエルクを見つける事が先決だった。
きょろきょろと辺りを見回すと、其処には子供一人分くらいの、
大きな白いモノがいくつも並んでいた。
其れが巨大蟻だと気づくのはまだまだ先の話・・・。
一方エルクは、迷い込んだこの洞窟があり地獄である事を、
一発で見抜いていた。なぜなら此処にきたのは一度ではなく、
今回で二度目となるからだ。
一度目は迷い込んで出られなくなった所を今は亡きお父さんに
助けて貰った時だ。だが今回はもうお父さんは居ない。
ましてやお母さんも生きてはいない。いるのは、そう。
命を助けて貰ったヒカルただ一人…。
何とか出口を探そうとするのだが、
侵入者の気配を感じたのか、無数の巨大な蟻が行く手を阻んでくる。
其の大きさといえば、顔を上へあげないと蟻の顔が見えない位大きい。
体も大人一人分ゆうに超えている。世の中には、
こんな大きな蟻も存在するんだと少し関心させられるが、
大きくなった分、其れだけ攻撃力も高いという事。
ひとつ足でけられようものなら其れこそ鈍器で
殴られたかのような痛みを味わうことになるのは明白。
一瞬ヒカルの事が心配になったが、今はこの目の前の、
蟻の大群をさばかないことにはヒカルはおろか、
出口すら見つからないままになってしまう。
「所詮蟻だ。俺にはむかう事がどれだけ
命取りになるかを教えてやる・・・!」
そういって腰にしまってある短剣を器用に
クルクル、っと回し右手に持つと、左手を右手に添えて
蟻の襲撃に身構えた。
刹那、蟻が襲い掛かってきた、がエルクは機敏に其れを交わし、
蟻の胴体部分に短剣をクルっと逆に持ち替えて突き刺した。
いや、正確には殴りつけた、が正しいだろうか。
ギュウウ、と聞いたことのない声を上げて巨大な蟻はその場にうずくまってしまう。
「無駄に殺したりすると、後でヒカルに見つかった時が大変だしな。
良かったな、おまえ、ヒカルに感謝しろよ。はっはっは。」
そういってエルクは次々と蟻の攻撃をかわしては胴体部分に短剣を練りこませ、
ドンドンと蟻をその場に倒していく。
ふと、目の前を見ると今までに見た事のないでかい蟻・・・。いや。
此れは昆虫というのか、人間というか、解らない・・・が。
顔は明らかに女性の顔、そして腹部まで裸であらわれ、
足の部分だけでかい何かの昆虫と同化している。
大きさはゆうにエルクの数倍。
先ほどの蟻とは比べ物にならないくらい大きい。
其の化け物の周りには無数の巨大なダンゴムシがざわざわしている。
こんな数、とてもじゃないがさばけない。
そう察したエルクはより一層身構えた。
「今度は手加減出来ないぜ。
胴体に短剣一発、なんて軽いものじゃ済ませねぇよ。」
短剣を握りなおす手には汗が大量に湿っている。
勿論エルクはこの時勝てるとは思っていなかったからだ。
防戦一方だったエルクだが、今回はエルクから斬りかかる。
「オラァァァァァァ!」
掛け声と共に足を地面に踏み込ませ、どんっ、という音がなったと
同時にエルクの体は化け物の懐まで飛び込んでいた。
其の速さはまさに電光石火の如く。普通の人間では対応出来ない。
しかし、刹那。
ドンッ、という鈍い音がなったと同時にエルクは壁に叩きつけられてしまった。
エルクが懐へ飛び込むよりも早く、其の化け物は腕をエルクの腹部に
突きつけていたのだ。
其の衝撃が余りにも強すぎた為、エルクは動けなくなってしまった。
「くっ・・・!どうすれば・・・!俺がこんなんじゃぁ、
アイツを護ってやる事なんて出来ねぇってのによ!」
口だけは何とでもいえた。
でも肝心の肉体は完全にオーバーワーク。
何をしても動いてくれないこの体をエルクはただただ見つめるばかり。
「エルクさん!」
聞きなれた声が聞こえたと同時にエルクの体は先ほどの
痛みを感じない位に完治している。
そう。ヒカルが着てくれたのだ。
そして治癒魔法であるヒールをとっさにかけてくれたという事だ。
「いいところにきた!サンキューヒカル!」
言葉と同時に再び化け物の懐へと攻撃を試みる。が、
またもやエルクは化け物に吹き飛ばされてしまう。
ドンッ。
そんな音が洞窟内に響き渡る。
「ぐっ・・・・!」
また動けなくなってしまうエルク。
私は必死にエルクにヒールをかける。
でも慣れていないせいか、何もしていないのに、
体がドンドンと疲れてきてしまう。
最後にはヒールすら出せなくなってしまい、
私もその場にへたれこんでしまっていた。
「駄目だ・・・殺られる・・・!」
珍しく私とエルクの思考は一致していた。
性格が全く正反対の二人だが、
こういう時だけは同じ事を思うのだと思うと、
不謹慎ながらも少し感動してしまう。
でもこの感動ももう感じる事も出来なくなってしまう。
エルクとももう会えなくなってしまう。
エルクはエルクでふがいない自分に嫌気がさしていた。
あの時、ヒカルを護ってやるって決めたはずなのに、
こんなところで躓いて殺されてしまうだけの立場。
元はといえば俺が蟻地獄なんかに足をすくわれたからだ。
「ごめんな・・・ヒカル。
俺、おまえのこと・・・護ってやれなかった。」
その言葉を合図に化け物は腕を振り上げ、
エルクにとどめをさそうとした。
「いや、そんなのいや・・・!
エルクさん!エルクさぁぁぁぁん!」
私は泣いていた。
どうしようもないこの状況下の中で。
エルクが殺られてしまえば今度は私の番。
でもそんな事どうでもよかった。
目の前で誰かに死なれてしまうなんて、
そんな、そんなの、いやだ。
「神様・・・!お願い!エルクさんを助けて!」
私の声は虚しく洞窟に響き渡る。
ザンッ!
そんな聞きなれない不協和音が耳に響き渡る。
目は開けられない、だというのに。
液体らしきものが高速で私の顔中に飛んでくる。
もういやだ。此れが血だってことくらい、
目を開けなくてもわかるのに。
どうせなら、私は此の侭目をつぶったまま、
殺されてしまいたい。
人の死ぬところなんて見るくらいなら。
「食らえ・・・マヤー・・・ブランディッシュスピア!」
夢でも見ているんだろうか。私は。
恐怖の余り、幻覚を見ているんだろうか。
自分が死ぬと解ってから、誰かが助けてくれないだろうか、って
そんな都合のいい事を思っていたから・・・?
最期にそんな幻覚を見せる意味は、
一体何処にあるの・・・?
グォアアアアアア!
そんな声が耳に響き渡る。
違う・・・まだ、まだ私は生きている・・・!
目を開くと、自分の身長ほどある一本の銀色の槍を掲げた騎士が、
訓練を受けたペコペコに跨って化け物の前に立っている。
一方の化け物は腕を切り落とされたのか、片腕を損失。
腹部に強烈な十字の傷を作ってだらしなくも血を流して苦しんでいる。
暫くすると化け物はその場に倒れこみ、動かなくなってしまった。
私には何が起こったのかわからなかった。
刹那の出来事で何がどうなったのか・・・。
解るよしもなかった。
「あ、エルクさん・・・!エルクさん!」
私はとっさに思い出し、
エルクの姿を確認するとすぐさまヒールで傷の手当てをする。
傷は瞬く間にふさがっていき、エルクは意識を取り戻した。
「う・・・あ・・・ヒカル・・・?
此処は何処だ・・・?天国か・・・?天国って、
蟻地獄みたいなんだな。気持ちわりぃ。」
頭が混乱しているせいか、完全に混乱してしまっている。
無理もない、あれだけの死直前の経験をしたのだから。
暫くは頭が正常に働くなってしまっても可笑しくはない。
「おまえたち、大丈夫か?
どうしておまえたちのような小さい子供がこんな所に居るのだ。
たまたま俺が来たから助かったものの、
もう少し遅れていたら完全にマヤーに殺されていたぞ。」
声の主・・・先ほどの騎士はそう話す。
私はまだ混乱が解けない頭を一生懸命整理して事のあらすじを騎士に話す。
「成る程。そういう事か。其れはとんだ災難だったな。
此処最近でどうも蟻地獄の数が増えて、
余りにも巣が大きいからもしかして、と思って探索に来ていたのだが、
やはりマヤーが巣食っていたようだな。」
「マヤー・・・というのは先ほどの化け物の事でしょうか。
見た所女性のようにも見えましたけれど・・・。錯覚かな・・・。
えへ・・・そんな化け物が居るはずもないですよね。」
自分で言いつつも恥ずかしくなってまた頭をぽんと叩いてしまう。
そんな言葉を聴いた騎士は君の言ってる事はあっているとだけ述べる。
やはりあれは人型をした化け物だったのだ。
名前を「マヤー」というらしいが、他にもあれの姉妹みたいなもので、
「マヤパープル」というモノも存在しているらしい。
マヤーは特殊な生物で、年に何回か、のペースで出現するらしい。
どういう原理でソレが存在するのかはいまだ解明はされておらず、
今出来る事は蟻地獄を探索し、地味にマヤーを見つけて討伐するくらいだそうだ。
昔は沢山の騎士が討伐を行なっていたらしいのだが、
今現在は其の騎士ともう一人の騎士だけになってしまっているらしい。
其のワケは話してくれなかったが、私はあることを忘れていたのを思い出す。
「あ、騎士さん、助けて頂いて本当に有難う御座いました。
ほら、エルクさんもお礼を言いなさい。」
そういって私はまだぼんやりしているエルクの頭を押して、
騎士にお辞儀をした。其れを見ていた騎士はハハハと笑い出す。
「いやいや、其処まで感謝される事ではないのでな。
騎士として当然の事をしたまでだ。
時に聖職者、君ならば私のこの言葉、理解出来るはずだ。」
言われて納得する。私は聖職者であり、
人のために活動している。が其れは騎士にとっても同じ事なのだ。
白と青の淡い色のロングコートを身にまとう騎士。
まるで・・・ブラッドレインに出てきたカイという名の騎士のように。
なんてこともいっていられない。
私たちには別の目的があるのだ。
そう、モロクの館内の探索。問題があれば其れを解明。
まぁ、問題は大有りだとは思うけれど。
「あの、騎士さん、私たち此処から出たいのですけれど、
出口は何処にあるのか教えて頂けませんか?」
そういうと騎士は造作もない、といった口調で出口を説明してくれる。
また二人でお礼を言ってその場を去ろうとした刹那。
「待て、モロクの館を探索するといっていたな?
丁度俺のところにも其の依頼がきていてな。
丁度いい、俺もおまえたちと一緒に館を調べにいこう。」
そういって騎士は二人に言葉を放つ。
私は勿論歓迎なんだけど、エルクは・・・、って。
エルクはというと此れでもないかっていうくらいに、
目を輝かせて騎士に見とれていた。
圧倒的な其の強さ。そして騎士・・・。
あの化け物を一撃で葬り去る威力。
そんなものを見せ付けられたら、というか
エルクは多分意識不明で見ていなかっただろうけれど、
状況からこの騎士が殺ったという事くらいは想像がついたのだろう。
暫く見とれていたエルクは、
「お、俺は勿論歓迎さ!これだけ強い人がいたら、
俺もヒカルも安心できるってもんだしな!
俺、盗賊のエルクって言うんだ。で、こっちが聖職者のヒカル。」
そういってエルクは私を指差して名前を言う。
私は名前を言われてまたお辞儀をして、
「あ、見習い聖職者のヒカルです。宜しくお願い致します。」
そういうと騎士は長い銀色の槍を持ちかえると、
「・・・俺の名前はカイだ。宜しくな。」
其の名前を聞いて私とエルクは拍子抜けをした。
そう、あの世界で実力ナンバーワンと謳われるあの聖騎士が、
今自分等の目の前にいるという事実。
そして其の誰もが一度は見たいという其の剣術を、
この目で見てしまったから尚更印象が強くなってしまった。
格好いい。
私はただ其の強さに圧倒されてしまい、
槍を掲げるこの聖騎士カイを心の底から格好良いと思ってしまった。
其れと同時にエルクも私と同じ事を考えていた。
一度ならず二度までも思考が一致する。本当は、
テレパシーでも使えるんじゃないか、って位のタイミング。
でもこの場合、私とエルクじゃなくても、
きっと誰しもが、そう思ったと思う。
蟻地獄から抜け出した私たちは問題の街・・・
砂漠の街モロクへと急ぐことにした。
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