RagnarokOnline
〜Dream and hope〜
04/ミステリー捜索
此処は砂漠の街モロク。
辺り一帯はプロンテラとは程遠い景色。
そんな景色の中には、人影はなく、
商店こそあるものの、店の人は居ない。
商品は並んでいるのだが・・・・。
此れも全て問題の館の影響だというならば、
凄まじいくらいの影響を与えている。
「ヒカル、考えていても仕方ないぜ?
とっとと其の館にいって原因解明しよう。」
真剣に考えてくれているのか、
エルクの顔は言葉とはうらはらにとても楽しそうだった。
気持ちはどうあれ、確かにエルクの言う通り。
此処でぼんやり考えていても仕方ないのは解っている。
「館はこの通路を突き当たった建物の裏になってるはずだ。」
カイがそういうと私たちは館に向かって足を進める。
モロクの入り口からは差ほど距離もなく、
だらだらと歩いているだけでもすぐに辿り着けてしまう。
プロンテラのように栄えていないこの街は、
其処まで街全体が大きいというわけでもないからだろう。
それにしても、此れだけの景色をみせつけながらも、
この館だけは一遍している。
綺麗な外見をし、まるで貴族専用のダンスパーティー会場のよう。
きっと貴族の御偉いさん方は、こういう行事に呼ばれると、
こういった館のようなところに呼ばれるのだろう。
館の入り口前は物騒な事にも扉は開けっ放し。
『サ・・・・イ・・・セ・・・シャ・・・ヒ・・・・ヨ・・・』
一瞬ドキリとした。何かの声らしきモノが耳へと伝わる。
エルクとカイにも聞いてみたが、そんな声は聞こえていない、と言う。
きっと館の事を意識しすぎた幻聴だと思う事にして、
私たちは館の中へと入っていく。
砂漠街モロク館内部。
館の中は真っ暗で、開かれた扉の外からくる
光だけが唯一の明かりとなっている。
其れはお構いなしとエルクが先陣をきる。
エルクは元々盗賊、こういった暗闇は何時もの事らしく、
暗闇にはてんで慣れているといった様子だった。
勿論カイも沢山の経験をしてきているために、
こういう暗闇でも一切動じない。
きっと恐怖を感じているのは私だけなのだろう。
こんなことじゃ駄目だとは思うのだけれど、
やっぱり、暗闇はとてもとても怖いところ。
森の中で襲われたことを思い出してしまうから────。
「おい、おまえたち、気を抜くなよ。
見えてはいないが、かなりの数の殺気を感じる。
あの男が依頼してきた内容・・・
半信半疑だったが、あながち嘘でもなかったようだな・・・・!」
カイの言葉の最後とあわせるかのようにして、
目の前には大量の化け物が姿を現した。
其処にはあのマヤーと良く似た姿をしたものも居れば、
巨大なダンゴムシまで居る始末。
はては人間の形をした、言わばゾンビといわれる類も。
どういう理由でこの化け物が生まれたのだろう。
ゾンビなんて見るからに元は人間ではないか・・・?
ゾンビ、其れは腐敗した人型の化け物。
一重にゾンビとは吸血鬼と呼ばれる類の異種に噛まれると、
いや、正しくは自分の血を送り込む。
そうすると普通の人間としては生きていられなくなり、
体の細胞が著しく進化してしまい、成長速度が急激に、
早くなってしまう。そうして其の体の成長速度に追いつけず、
肉体はあっという間に腐敗してしまう、が、精神は、
誰かの生き血を吸う事で現世に存在していられる。
其のなれの果てがゾンビ、という存在だ・・・。
とそんな知識を何処かの本で読んだ気がする。
ということはゾンビって本当はモロクの住人なんじゃないだろうか。
少しエルクに聞いてみる事にした。
「エルクさん。あなたは確かモロクの出身でしたよね?
モロクはこんなに人が少ないものなんでしょうか。」
突然の事に一瞬戸惑っている様子を見せたがすぐに返事をくれる。
「ああ?こんなときに何言い出すかと思えば。
そうだな、モロクに着た時に人の気配を探ってみたけど、
館の様子からするに、ありゃ館の化け物に殺された奴がいたかもな。
あるいはそんな状況に耐え切れず別の街へ引っ越したか。
ああ、でも其れはないか、第一モロクはさ、着て思っただろ?
他の街とはかけ離れた存在なんだよ。だからモロクの住民ってのは、
モロク以外の街ではどうもなじめず、引っ越してもすぐに戻ってきてしまう。
おおかた、今うっすらと見えるゾンビにでもなっちまったのかもな。ははは」
最後にそんな事を言って高々と笑い出すエルク。
こんなときに不謹慎。でも此れで理解は出来た。
きっと此処にいるゾンビは元は人間。だとすれば・・・?
私は其れを倒すわけにもいかないし、エルクとカイに、
倒させるわけにもいかない。どんな形をしていても・・・
其れは人間だったのだから。
エルクとカイは気配を察知し、剣を抜き、身構える。
私は其の後ろに隠れて様子を伺うことにした。
私が前に出たところで、この二人のお荷物になることに変わりはないから。
館の周りときょろきょろと見てみると、其処には、
夥しいまでの血痕がこびりついていた。
脳裏に蘇る森の中での出来事、エルクとであったときのこと。
あり地獄での出来事・・・私はきっと血には縁がない。
私が血を見た時、其れは大切な誰かを失いかけてきた。
もういや、血を見る事だけはどうしても駄目。
ぐるぐると頭の中に鮮明に蘇る思い出。
私はそんな血痕に翻弄されて眩暈がして倒れそうになる。
「!?
ヒカル!?」
エルクはとっさに其れに気づき私を受け止めてくれる。
でも自分の力では少し立ち上がれそうにない。
頭がぼう、として力が入らない。このまま眠ってしまえそう。
「どうした?ヒカル?
体が震えてるぞ、怖いのか?」
知らず私の体は震えていたらしい。
怖い。本当に怖い。此処から先もまた、
誰かを失いそうになったりするかもしれないし。
もしかしたら今度は本当に誰かが死んでしまうかもしれない。
だから本当は、甘い事は言ってられないんだと思う。
それでも私は何処かであのゾンビを助けて上げたいと思ってしまう。
グォオオオオオ!
其れを見ていたゾンビは勢いよくエルクの背後をとらえ、
襲い掛かってくる。が、刹那。
「バッシュ!」
カイが叫んだ瞬間、エルクの背後にいたゾンビは
吹き飛ばされてしまった。
カイ程の腕を持つ人間ならば、
吹き飛ばすよりも一撃で粉砕する事も可能だった。
でもあえてカイは其れをしなかった。
もしも、私と同じ考えだったのなら。
きっとこの人もゾンビを殺しはしないのだろう。
・・・ゾンビがそう簡単に死ぬとも思えないが、
そもそもゾンビは死ぬのかどうかすら疑問に思ってしまう。
「あ、悪い、カイさん。」
「有難う御座います。」
私たちはカイにお礼を言う。
カイは其れよりも私の体調を気にしてくれていたようだが、
私は大丈夫とだけいって起き上がる。
「私は大丈夫です。ご迷惑をおかけしました。
其れでは、原因を探りましょうか。」
その合図で私たちは館の奥へと進む事にする。
勿論目に見えているのは大量の化け物の姿。
其れを殲滅するのが最初の目的となる。
そうしないことには何処にも進めないから。
「インベナム!」
「ボウリングバッシュ!」
「ダブルアタック!」
「オーラブレイド!」
エルクとカイは次々と化け物をなぎ倒していく。
だが化け物は其れほどまでの怒涛の攻撃を受けながらも、
傷ひとつついておらず、すぐにまた起き上がってくる。
「はぁ・・・はぁ・・・ちっ・・・ラチがあかねぇ。
こっちだって不老不死じゃねぇんだ。
此処で戦ってもいずれは死ぬぜ?」
私は二人を懸命にヒールで回復していく。
カイもエルクも一流の剣術を持ち合わせるが、
それでいても人間、長期戦になればなるほどに、
体から疲れが見えはじめ、動きが鈍くなってしまう。
それに引き換え化け物は何度も起き上がり、
其の運動神経は衰える事なく立ち向かってくる。
私は後ろでヒールを行なうのだが、
流石に其れも限界が来てしまう。
私は腕を挙げる事ですらつらくなってしまい。
その場に倒れこんで気を失ってしまった。
「ヒカル!?おい!ヒカル!しっかりしろ!」
エルクは私に何かを叫んでいる。
でもその声を聞いても私は立ち上がれない。
脳は動けといっているのに、体はそれについていってくれない。
館にきて早くもダウンなんて、本当に私はただのお荷物なんだ。
「盗賊!聖職者を安全な場所へ!
俺は此処であいつ等を食い止めてやる!急げ!」
其の言葉に相槌をうち、エルクは私をかかえて
何処かへ走っている。
行くアテはあるのだろうか。そんな事を気にしてる。
「ちっ、俺も疲れてんだけどな。
で、ヒカルは気を失ってるのか・・・。
だああ、どっか休める場所ねえのかよおお。
ってかヒカル重ぇよ!ちったぁやせやがれ!畜生!」
気を失ってると思っているのか、酷い事を言ってくれる。
ちゃんと聞いている。だから体が動くようになったら、
エルクを少ししかってやろうと思う。
でも、エルクの背中にのしかかった今の状態。
本当は落ち着いてる。私って不謹慎。
館2F 個人部屋。
「ふう、此処まで来れば大丈夫だろう。
ベッド・・・うお、流石館だな。高級ベッドだぜこりゃ。
盗んで売ればいい金になりそうなんだがなぁ。
っと、んな事より、ヒカルをベッドに、っと。」
そういってエルクはヒカルをベッドへと乗せる。
そこでエルクは床に座り込み、使えそうなものがないか、
部屋の中をくまなく調べまわっている。
途端、ドアが勢い良く開く。
「盗賊!無事か?
あの化け物共、攻撃が全然きいてない。
このままじゃちょっとまずいな。
暫く此処に身を潜めて対策を練ろう。」
部屋にはカイが着たようだ。
あれから何時間くらいたったのだろうか。
私はふと目を覚ます。
首を横に向けてみると、其処にはエルクとカイの姿。
私は首を元のほうへと向けると、静かに目を閉じる。
◇
「カイさん、カイさんはどうして騎士になろうと思ったんだ?
そりゃぁ、剣術も世界一で騎士になるってのも、
納得いくんだけど、何ていうかな、俺がこんなんだからかな。
まともな職業じゃねえし、ちょっとワケを聞いてみたくね。」
そういうとカイはふむ、と少し考え、ワケを話してくれる。
カイは元々プロンテラの出身という。
其処でカイは生まれ育ち、ある日騎士団を見かける。
特別大きな戦争があったわけではないのだが、
騎士団の人間は毎日プロの住民が平和で暮らせるようにと、
自分の人生を他人のために費やしていた。
それに特別関心があったわけではないのだが、
騎士団の人々を見ると、皆いきいきしていたのだという。
そんな騎士に憧れてカイは騎士団に入ることを決意し、
剣術を自分なりに習得し、騎士団に入団したんだそうだ。
其の当時はまだプロンテラにある騎士団の入団で、
ブレイドバンカーを設立したのは其の後の話だという。
世界最強の騎士団ブレイドバンカー。
其の世界最強と謳われた騎士団は50年であっさりと壊滅。
ブラッドレイン・・・。
そう、世界最強騎士団ブレイドバンカーは、
其のブラッドレインの最初の犠牲となってしまったのだ。
カイは其のときの数少ない生き残りだという。
敵はたった一人。誰もが騎士団の勝利を確信した。
が、気がつけば騎士団の人々はその場に倒れこみ、
動かなくなってしまっていたという。
たった一人の敵、其れは一人とは思えない圧倒的な
軍事兵器のような存在だったとカイは話す。
「今でも思い出す、あいつの台詞を・・・。
血の雨を我に見せたまえ・・・。
其れがどんな意味だったのかは、
目の前の惨劇を見れば誰だって理解出来る。
俺の目的は、騎士団を壊滅させ、
多くの命を奪ったあいつを討つ為だ。
そしてまた、ブレイドバンカーを立て直すのが、
今の俺の目的になってる。」
そう話すカイに俺は、何もいえなくなってしまった。
聞いてよかったのか、其れとも・・・。
そんな俺を見かねたのか、カイは話す。
「盗賊よ、気にすることではない。
此れは俺の話だ。俺が話してもいいと思ったから、
おまえに話しただけのことなのだから。
おまえにはおまえでもっと悩むことがあるのだろう?
其処で寝ている聖職者を護るんだろう?」
そうだ、俺はあの時、助けてもらった時、
助けておきながらも震えてるヒカルを見た。
まだ俺と同じくらいの年なのに。
それでもこうして背負ってるものも
自分の過去も未来も、本当に違ってくる。
其れがまわりの環境であったり・・・。
はてまた、巡り合う人の違いであったり。
理由は様々だし、自分が目指すものは
たとえ其れが人から忌み嫌われているものであったとしても、
其処には自分だけにしか解らない、
確かな信念が存在している。
そうだ、自分が盗賊であったとしても、
ヒカルを護るという事には、
自分が有名な騎士であろうと、立派な聖職者であろうと、
へんぴな盗賊であろうと、其れはきっと関係ないんだ。
大事なのは人を守ろうという其の気持ちだけでいいんだ。
生まれてから友達という友達が出来なかった俺。
何をしても助けてくれる人なんていやしなかった。
全ては親が盗賊団だったからという理由だけど、
俺はそんな自分の職業に誇りを持っていた両親を、
尊敬していたし、俺もそんな両親に憧れて、
盗賊になったんだ。だから人から忌み嫌われて、
生活していくことなんてこれっぽっちも
障害にはならなかった。だというのに、
ヒカルのようなお人よしが俺なんかを助けたから、
俺には大事なモノが出来てしまった。
ヒカルという存在が、其の存在だけで、
俺は其れを護ってやろうって決めたんだから。
生まれて初めての友達。
理由はきっとそんな事。
俺を人だと認めて、助けてくれた。
自分が殺されるかも知れないと思っていたとしても、
迷うことなく俺の事を助けてくれたヒカル。
だから俺は護ってやろうと決めた。
職業が違っていても、
こうして分かり合える事を教えてくれたはじめての人。
人を守るという目的を持たせてくれたはじめての人。
俺がこうして表に出て、カイと出会えたのも、
きっとコイツのおかげなんだと思えるから。
生まれや環境、職業が違ったって、
こういった幸せはきっと、きっと・・・。
「幸せは・・・きっと誰もが手にしていい唯一の宝物なんだ。」
俺はカイに其の一言だけをいって、
まただんまりになってしまった。
◇
声が聞こえなくなってしまった。
二人とも寝てしまったんだろうか・・・?
あの二人に限ってそんな事はきっとありえない。
だとしたら二人向かい合ってだんまりしているのだろう。
私も何時までも寝ているわけにはいかないので、
そっと体を起こして二人に声をかけた。
「おはよう御座います、エルクさん、カイさん。
お二人のお荷物になってしまって、
本当に申し訳ありません。」
そういって私は二人に詫びた。
でも二人共そんなのは気にしていない様子だった。
だから、だからこそ、
余計に申し訳ないな、って思ってしまう。
「おまえに何もなくて何よりだな。
さ、館の探索続けようか。これといって対策はないけど、
やっぱ斬り進むしかねえんじゃねえかな、はは。」
エルクがそういうと私もカイも其れに同意して、
再び館の探索を続けることにした。
部屋を出ると其処には先ほどとは違った風景があった。
館内部は以前として暗闇なのだが、
化け物の気配が全くといっていいほどなくなってしまっている。
「あれ、おかしいな、敵の気配が全くなくなったぞ。
此れがあれか、ミステリーなのか?
もう何だかこの館は意味がわからなくなったなぁ。」
エルクがぼやく。
ヒ・・・ル。
そんな声が聞こえた気がした。
あの時とは違った声だったけれど、
声が小さすぎて全てを聞き取れなかったけれど、
また幻聴だと思って今度は二人には言わなかった。
三人が館の階段を下りていたとき、
扉の近くに人影が見えた。
「おい、あそこに誰かたっているが、
あれは・・・人じゃないな。」
カイがそういうとエルクとカイは身構えた。
私もそっと二人の背後に回りこむ。
「イマスグ カエレ ニンゲン
ココハ ナモナキ ヤミノ ソウセツシャ サマノ
ヤカタナノダ カエレ ニンゲン」
声の主は言う。
カタコトの言葉、言語機能が麻痺しているのだろう。
人型、そして言葉を辛うじて話せる。
だとすればあの声の主はきっと・・・。
「貴様は誰だ、名を名乗れ。
さもなくば俺の剣がおまえを切り裂くことになるが、
どうする?」
カイは身構えたまま言葉を放つ。
だが、声の主は答えない。
「幾ら言葉が話せるからって通じる相手でもないだろ!
俺は行くぜ!」
そういってエルクは声の主にきりかかる。
踏み込みにも無駄がなく、マヤーの時とは違って、
数段と腕を挙げたようだ。
でもこの短期間で此処まで成長出来るなんて、
此れもあの聖職者がいっていた、才能、というやつなんだろうか。
「さあ!とっとと成仏しろよ!化け物め!」
そういってエルクは人語を話す人型を切りつけようとしたが、
ソレは全く抵抗する様子を見せていない。
「エルクさん!殺しちゃ駄目!」
私は知らず叫んでいた。
幾ら姿が変わっていてもあれも元は人間だった。
それに人語を話すならきっと何処かに対策はあるんだと思っていたから。
ゾンビに関するデータは既に沢山あるんだから
きっと何れソレを打開できる対策だって生まれるはずだから。
エルクはヒカルの言葉で立ち止まる。
ソレもゾンビの目の前で。
「おい!ヒカル!こんなときにそんな事いってる場合じゃないだろう!
殺らなきゃ俺たちが殺られちまうんだぞ!
そんな悠長な事言ってる暇があったら戦うんだよ!」
今だ、といわんばかりにソレはエルクを襲おうとする。
「エルクさん!後ろ!」
声は届いてもエルクでは反応出来ない至近距離。
殺られる、と思った刹那。
「殺すなとはまた難しい事を言ってくれるな、聖職者!
だったらこうすればいいんだろう!」
そういってカイは光の速さでエルクとソレの間に割ってはいり、
背中をエルクに向ける。
グシャッ
そんな不協和音が三人の耳へと到達すると、
カイの右肩から夥しいまでの血が溢れていた。
白と青で染め上げられたロングコートは、
じわじわと赤く染まっていく。
「ぐあっ・・・!」
カイが叫ぶ。噛まれた傷が相当に深い。
噛まれたと同時にエルクとカイは、
機敏に動いてソレと距離をとる。
私は急いでカイの肩をヒールで治療する。
カイの肩の傷はふさがったが、カイの様子が可笑しい。
「ぐ・・・あ・・・くっ!腕が動かん・・・。
ちっ、何とも無様な姿を見せてしまったもんだ。」
また私のせいで誰かが傷ついてしまった。
きっと私が居なければこの問題はすぐに片付いていたかもしれない。
カイが居なければきっとエルクは殺されていたと思う。
どうして私は、足を引っ張ることしか出来ないのだろう。
でも、其れでもやっぱり・・・元が人だと解っている以上は、
殺せない、殺すところを見ていられないから・・・。
「もう見てられねぇ!
ヒカル!今回ばかりはおまえの言う事だけは聞いていられないからな!
カイがこんな目にあってる以上、俺は俺のやり方で、
アイツを殺すからな!」
そういってエルクは再び身構え飛び掛ろうと体制を整える。
するとソレは再び声を上げる。
「ヒカル オマエハ
ヤミカラノ メイレイ
イカシテオイテハ イケナイ コロス。」
ソレは話す。私を生かしておいてはいけない人間だからと。
だから殺すのだという。きっと聖職者だったなら、
私ではなくてもそういう命令が下っていたのかもしれない。
言葉と同時にエルクは再び飛び掛る。
先ほどと同じ速さで距離も申し分ない。
此の侭行けばヤツの懐には何なく飛び込んで、
刹那のうちに切断できるだろう。
でもソレは攻撃をしてくる気配は見られない。
また隙をついて攻撃してくるつもりなのだろう。
其の手には食わない、といった表情で、
エルクは襲いかかる。
「ヒカル オマエ
アノトキノ モリノ
オサナイ セイショクシャ・・・
コンナトコデ ソレモ サダメ」
「!?」
ソレは言った。
この人語を話すゾンビはあの時。
森の中で狼に襲われていた私を助けたあの聖職者だった。
私の命の恩人。だから殺しちゃいけないんだ。
今度こそ、本当に人間だと解ったんだから。
ソレも私を助けてくれたあの人。
此処で殺してしまえば、軽蔑していた父を殺した、
あの、にくい盗賊と同じ事をすることになるのだから。
「エルクさん!やめて!
其の人は、その人は私の命の恩人なんです!」
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